『HUNTER×HUNTER』1巻そのもののストーリー構成や伏線、テンポについては、こちらの記事で詳しく分析しています。

「『HUNTER×HUNTER』を読んでみたいけど、登場人物が多くて難しそう」そんな印象を持っている人もいるかもしれません。
実際、長期連載となった現在の『HUNTER×HUNTER』には、非常に多くのキャラクターが登場します。
しかし、1巻だけを読み返してみると、意外なことに人物の描き分けはかなりシンプルです。
特に印象に残るのが、
- ゴン
- キルア
- トンパ
の3人。
面白いのは、この3人が全員「ハンター試験」という同じ場所にいるのに、試験に対する向き合い方がまったく違うことです。
ゴンは「面白そうだから進む」。
キルアは「難しいから面白そう」と考える。
そしてトンパは、「他人を脱落させること」に楽しみを見出している。
この違いが、それぞれのキャラクターを強烈に印象づけています。
今回は『HUNTER×HUNTER』1巻に登場した人物だけを対象に、ゴン・キルア・トンパの3人を分析します。
単なるキャラクター紹介ではなく、
「なぜこの3人は、たった1巻でもこれほど印象に残るのか?」
という視点から考えてみます。
※この記事では『HUNTER×HUNTER』1巻の内容についてネタバレがあります。
『HUNTER×HUNTER』1巻の人物は「能力」より「行動」で分かる
1巻を読んでいてまず感じるのが、キャラクターの説明が非常に分かりやすいことです。
例えばゴン。
「身体能力が高い少年です」
と説明されるわけではありません。
船の上で嵐の気配を察知したり、海へ飛び込んだり、森の中で凶狸狐を追いかけたりする。
その行動を見て、
「この少年、普通じゃないな」
と読者が理解します。
キルアも同じです。
「毒に耐性があります」
と長々と説明されるのではなく、トンパの下剤入りジュースを何本も飲んで、
「訓練してるから毒じゃ死なない」
と平然と言う。
そしてトンパは、初対面の受験者に下剤入りジュースを渡す。
これだけで、
「こいつは新人を潰すことを楽しんでいる」
と分かります。
つまり1巻では、人物設定を説明するより先に、人物が行動する。
この作り方が、3人の印象を強くしています。
ゴン|「面白そう」が行動の原動力になる少年
ゴンは「ハンターになりたい」より「知りたい」が強い
ゴンがハンターを目指すきっかけは、父親のジンです。
ジンはゴンを置いてハンターになった人物。
ゴンにとっては、ほとんど知らない父親です。
それでもゴンはハンターになることを目指します。
ここだけを見ると、
「父親に会いたい少年」
という分かりやすい主人公像に見えます。
しかし1巻を読み進めていくと、ゴンの行動にはもう一つ大きな特徴があることに気づきます。
それが、
「自分が面白いと思ったものに、とにかく近づいていく」
という性質です。
船長から
「一本杉を目指せ」
と言われたときもそうです。
船長が示した方向は、ハンター試験会場のある場所とは反対方向。
しかも、普通に行けば直行バスもあります。
それでもゴンは一本杉を目指します。
なぜなら、
「船長がそう言ったから、とりあえず行ってみる」
からです。
合理的に考えれば、バスを選んでもおかしくありません。
しかしゴンは、自分が興味を持った方向へ進む。
この性格が、1巻の物語を動かしていきます。
ゴンは「正解」を求めない
それが最もよく表れているのが、老婆の「ドキドキ2択クイズ」です。
母親と恋人。
どちらか一人しか助けられない。
普通なら、「どちらを選ぶか」を考えます。
しかしゴンは答えを出せません。
試験が終わったあとも考え続け、
「もし本当に大切な2人の内、一人しか助けられない場面に出会ったら、どうする?」
と疑問を持ちます。
ここがゴンの面白いところです。
クラピカは問題の構造を見抜きます。
レオリオは問題そのものに怒ります。
しかしゴンは、
「本当にそんな状況になったらどうするのか」
を考えている。
つまりゴンは、問題を「解く」よりも、問題そのものに興味を持ってしまう人物なのです。
この性質は、ゴンの強さにもつながっています。
ゴンの強さは「迷わないこと」ではない
一見すると、ゴンは何でも迷わず行動しているように見えます。
海が荒れていても飛び込む。
森の中でも凶狸狐を追いかける。
試験でも前へ進み続ける。
しかし、老婆のクイズでは答えを出せません。
ここには面白い矛盾があります。
行動するときは迷わないのに、考えるべきことには徹底的に迷う。
だからゴンは、単純な
「何も考えず突っ込む主人公」
ではありません。
むしろ、自分が納得できないことを簡単に終わらせない人物として描かれています。
1巻だけでも、その性格がかなり明確です。
キルア|「難しいから面白い」という危うさ
キルアはゴンとは正反対のスタート地点にいる
キルアがハンター試験を受ける理由は、ゴンとはかなり違います。
キルアは、
「別にハンターになりたいわけじゃない」
と言っています。
では、なぜ受けるのか。
ものすごい難関だと言われているから。
つまり、
「難しいから面白そう」
という理由です。
ゴンには「父親に会う」という目的があります。
一方でキルアには、1巻時点では明確な目的がありません。
それでも試験を楽しんでいる。
この違いが2人の関係を面白くしています。
下剤入りジュースの場面で「異常さ」が一気に伝わる
そしてキルアを一気に印象づけるのが、トンパとのやり取りです。
トンパが新人潰しのために用意した下剤入りジュース。
ゴンは一口飲んで吐き出します。
ところがキルアは、何本も飲んでしまう。
しかも、
「訓練してるから毒じゃ死なない」
と平然としている。
この場面の巧さは、キルアの強さを説明していないところです。
トンパの罠を、罠として成立させない。
これだけで、キルアが普通の12歳ではないことが分かります。
そしてトンパも、
「今年の新人はとんでもない」
と思う。
つまりキルアは、登場した瞬間から「試験を潰す側」のトンパにさえ警戒される存在として描かれています。
トンパ|「新人つぶし」は、なぜこんなに印象に残るのか
トンパは強敵ではない
1巻の人物の中で、個人的に最も面白いのがトンパです。
理由は単純。
別に強くないのに、ものすごく印象に残るからです。
ヒソカのような圧倒的な戦闘力があるわけではありません。
キルアのような特殊な身体能力があるわけでもありません。
ゴンのような主人公としての魅力があるわけでもない。
それなのに、トンパが登場すると、
「また何かやりそうだな」
と思わせられます。
なぜでしょうか。
トンパは「試験の敵」ではなく「受験者の敵」
トンパの特徴は、正面から戦わないことです。
新人に下剤入りのジュースを渡す。
相手の弱点を探す。
精神的に追い詰める。
そして、脱落していく新人を見て楽しむ。
特にニコルへの仕掛けは象徴的です。
トンパは、ニコルが自分の能力を過信していることを見抜きます。
そして、別の受験者を使ってニコルを罵倒させる。
結果、ニコルは精神的に追い詰められて足を止める。
ここでトンパがやっているのは、単なる「嫌がらせ」ではありません。
相手の弱点を見つけて、そこを狙っている。
だから怖い。
そして同時に、非常に人間臭い。
トンパは「強さ」ではなく「人を見る力」を持っている
ここがトンパを人物として分析すると面白いところです。
ハンター試験では、身体能力が高い人間や特殊な能力を持つ人間が目立ちます。
しかしトンパは、そうではありません。
彼が使っている武器は、
人間の弱さを見つけること。
自信過剰な人間には、自信を崩す。
新人には、警戒心の低さを利用する。
そして相手がどう反応するのかを観察する。
つまりトンパは、戦闘能力ではなく「人間関係を利用する能力」で試験を戦っている人物なのです。
これが、ヒソカやキルアとは違った意味で印象に残る理由だと思います。
ゴンとトンパは「人間を見る方向」が正反対
ここから3人を並べてみると、さらに面白くなります。
ゴンとトンパは、一見するとまったく違う人物です。
しかし実は、どちらも人間をよく見ています。
ゴンは、
「この人はどんな人なんだろう?」
という方向に興味を持つ。
トンパは、
「この人の弱点はどこだろう?」
という方向に興味を持つ。
同じ「観察する」という行為でも、目的が正反対です。
ゴンは相手を知るために観察する。
トンパは相手を利用するために観察する。
この違いが、そのまま2人のキャラクター性になっています。
キルアはその中間にいる
キルアは、ゴンともトンパとも少し違います。
キルアは人を見ることもできます。
ルールの穴を見つけることもできます。
相手の実力を判断することもできます。
しかし、トンパのように相手を潰すことが目的ではありません。
むしろ、
「面白いかどうか」
が判断基準になっています。
だからキルアは、ハンター試験そのものをゲームのように楽しめる。
ゴンは「やってみたい」。
キルアは「面白そう」。
トンパは「潰したい」。
同じ試験を受ける3人でも、目的がまったく違います。
3人を並べると「ハンター試験」の意味が変わってくる
ここまで3人を見てくると、ハンター試験は単なる能力試験ではないことが分かります。
もちろん、長距離を走る体力は必要です。
しかし、それだけではありません。
ゴンのように、自分の興味を追いかける人間。
キルアのように、難関そのものを楽しむ人間。
トンパのように、人間の弱さを利用する人間。
さまざまな人間が同じ試験に参加しています。
そして試験の中で、それぞれの人間性が露出していく。
だからハンター試験を見ているだけで、キャラクターを理解できる。
試験そのものが、キャラクターを描くための舞台になっているのです。
『HUNTER×HUNTER』1巻の人物描写が上手い理由
「このキャラはこういう人」と決めつけない
1巻の人物描写で特に上手いと思うのが、キャラクターを一つの性格だけで終わらせないことです。
ゴンは無鉄砲です。
でも、他人を助けることもできる。
キルアは飄々としています。
でも、ゴンに興味を持って一緒に走り始める。
トンパは他人を潰します。
しかし、それも単純な悪意だけではなく、本人にとってはハンター試験を楽しむ方法になっている。
もちろん1巻だけでは、それぞれの人物のすべてが描かれているわけではありません。
だからこそ、読者は、
「この人は次に何をするんだろう?」
と思います。
人物像を説明し切らず、行動によって少しずつ見せているからです。
まとめ|1巻の『HUNTER×HUNTER』は「人間の違い」を楽しめる
『HUNTER×HUNTER』1巻の人物を分析してみると、ゴン・キルア・トンパは、それぞれ違う方向を向いています。
ゴンは、「面白そう」という好奇心で前へ進む。
キルアは、「難しいから面白い」という感覚で試験を楽しむ。
トンパは、「人間の弱さを利用する」ことで試験を楽しむ。
この3人を同じハンター試験に放り込むことで、キャラクター同士の違いが自然に浮かび上がっています。
そして個人的に1巻で最も面白い人物がトンパです。
強いわけでもない。
主人公でもない。
それなのに、相手の弱点を見抜いて脱落させるという独自の方法で存在感を放っています。
『HUNTER×HUNTER』1巻の人物描写の面白さは、「キャラクターを説明する」のではなく、「同じ状況に置いて、違う行動をさせる」ことにある。
これが、今回1巻を読み返して感じた一番大きなポイントです。
物語が進むにつれてキャラクターが増えていく『HUNTER×HUNTER』ですが、その面白さの土台は、すでに1巻のハンター試験から見ることができます。
まだ『HUNTER×HUNTER』を読んだことがない人なら、まずは1巻。ゴン、キルア、トンパという3人が同じ試験の中でどんな行動をするのか。
そこに注目して読むと、単純な冒険漫画とは違った面白さが見えてくるはずです。


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