※この記事は『トリリオンゲーム』8巻のネタバレを含みます。
宝田は「できる営業マン」では終わらない
『トリリオンゲーム』8巻で初登場した宝田は、パイレーツ証券の営業マンです。
創業4年のトリリオンゲーム社を東証プライム市場へ1年で上場させる。
誰もが無茶だと思う提案を真っ先に持ち掛けた人物でした。
最初は勢いだけのキャラクターにも見えます。
しかし、物語が進むにつれて、それだけではないことが分かってきます。
例えば、ヨリヌキのアバターに花を贈ったという営業トーク。
実際にはハルが贈った花でしたが、宝田はネット上の書き込みを見つけ、その情報を営業に活かしていました。
その話を聞いたハルは、すぐにフカシだと見抜きます。
それでも宝田を見限ることはありませんでした。
相手を徹底的に調べ、少しでも距離を縮めようとする執念。
その営業力を見ていたからです。
ハルが「この男と組む」と決めたのは、大胆な提案だけではなく、その姿勢を評価していたからなのかもしれません。
審査部長が突き付けた厳しい現実
そんな宝田に待っていたのが、証券会社審査部長の言葉でした。
「ルールのハックだの、トリッキーな一手だの。そういうのはな、ちゃんと仕組み守ってるマジメな連中が日々周り固めているおかげで成り立ってんだ。」
この言葉は宝田だけでなく、読者にも突き刺さります。
『トリリオンゲーム』では、ハルのようにルールをかいくぐる発想が痛快に描かれます。
だからこそ、その裏側でルールを守り続ける人たちの存在を忘れがちです。
審査部長は、そんな”当たり前”を代弁する人物でした。
宝田の発想を否定したのではありません。
その発想が成立する土台を築いている人たちへの敬意を忘れてはいけない、と教えてくれたのです。
宝田が選んだのは「汚れ役」
宝田が選んだのは、自分が泥をかぶる道でした。
ハルとの喧嘩騒動。
一歩間違えれば、自分が会社をクビになるかもしれない芝居です。
それでも宝田は腹を括りました。
トリリオンゲーム社を上場させるためなら、自分が悪者になっても構わない。
手柄は相手に渡してもいい。
その代わり、責任や批判は自分が背負う。
これは営業成績のための行動ではありません。
一兆円という夢を実現するために、自分の立場まで賭けた覚悟でした。
本物の勝負師とは、泥をかぶれる人間
『トリリオンゲーム』には、多くの勝負師が登場します。
ハルは人生そのものを賭けて勝負する男。
桐姫は父親の支配から抜け出し、新会社を立ち上げる覚悟を決めました。
そして宝田もまた、自分なりの勝負に人生を賭けます。
ただ、その勝負の仕方は二人とは違いました。
派手な逆転劇でもなければ、天才的なひらめきでもありません。
自分が汚れ役になることで、周りを前へ進める。
それが宝田の戦い方でした。
だからこそ、審査部長の言葉を受け止めた後の宝田は、初登場時とはまったく違う人物に見えます。
営業マンではなく、一人の勝負師になった瞬間だったのではないでしょうか。
ハルと宝田が共鳴した理由
宝田はハルのような天才ではありません。
誰も思い付かない発想で世界を変えるタイプでもありません。
それでも、自分にできる勝ち方で一兆円の挑戦にすべてを賭けました。
だからこそ、ハルも宝田を信じたのだと思います。
勝負の仕方は違う。
役割も違う。
それでも、「成功のためなら自分のすべてを賭ける」という覚悟だけは同じでした。
二人が共鳴した理由は、能力ではなく、その覚悟にあったのでしょう。
まとめ
宝田は8巻から登場した新キャラクターです。
しかし、この一冊だけで強く印象に残る人物になりました。
それは営業力があったからでも、無茶な提案をしたからでもありません。
「汚れを背負う覚悟」を決めたからです。
誰かが脚光を浴びる裏で、誰かが責任を背負う。
誰かが成功する裏で、誰かが泥をかぶる。
そんな役割を自ら引き受けられる人がいるからこそ、大きな挑戦は実現できるのだと思います。
宝田はハルとは違うタイプの勝負師です。
しかし、自分にできるすべてを懸けて一兆円の夢へ挑む姿は、間違いなく『トリリオンゲーム』を象徴する勝負師の一人だったと感じました。


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