『HUNTER×HUNTER』1巻の感想|面白さを生み出す「伏線」と「テンポ」を徹底分析

漫画レビュー

「HUNTER×HUNTERって、面白いとは聞くけど、今から読むのは大変そう……」

そう思っている人も多いのではないでしょうか。

長期連載の漫画で、コミックスもかなりの巻数があります。

しかも、最近の『HUNTER×HUNTER』は複雑な能力や大量の登場人物が入り乱れ、かなり難解な漫画という印象があります。

では、その始まりとなる1巻はどうでしょうか。

実際に読み返してみると、意外なほどシンプルです。

ゴンという少年が故郷を旅立ち、ハンター試験を受ける。

その途中でクラピカ、レオリオと出会い、ハンター試験の会場を目指す。

大まかに言えば、それだけです。

ところが、読んでいて妙に引っかかるところがない。

次から次へと出来事が起こるのに、「急に話が進んだ」という感覚がほとんどありません。

その理由を1巻の内容から考えてみると、特に重要なのが、

「前の出来事が、次の出来事を自然に生み出していること」

でした。

今回は『HUNTER×HUNTER』1巻の感想を振り返りながら、伏線とテンポという2つの視点から、なぜ1巻が読みやすく面白いのかを深掘りしていきます。

※この記事では1巻の内容についてネタバレがあります。

『HUNTER×HUNTER』1巻のあらすじ

主人公のゴンは、くじら島で暮らす少年。

幼い頃に両親を亡くしたと思っていましたが、実は父親のジンは生きており、世界的なハンターとして活動していることを知ります。

ゴンはハンターになれば父親に会える。

その思いから、母親のように慕っているミトさんの許しを得て、ハンター試験を受けるため島を旅立ちます。

旅の途中で出会うのが、

  • クラピカ
  • レオリオ

の2人。

さらにハンター試験では、

  • キルア
  • ヒソカ
  • トンパ
  • サトツ

など、個性的な受験者や試験官たちが登場します。

そして1巻では、ゴンたちがハンター試験の一次試験を突破し、二次試験会場を目指すところまでが描かれます。

ゴンの旅立ちはシンプルだからこそ分かりやすい

最初に描かれるのは「ハンターになりたい理由」

1巻の冒頭で描かれるのは、ゴンの旅立ちです。

ゴンはくじら島で沼の主を釣り上げます。

この場面で印象的なのが、背景の描き込みです。

森や水辺の自然が丁寧に描かれ、ゴンがどんな場所で暮らしてきたのかが視覚的に伝わってきます。

そして、そこからゴンがハンターを目指す理由へつながっていく。

父親のジン。

その弟子であるカイト。

そしてキツネグマからゴンを救った出来事。

これらによって、

「ゴンがなぜハンターになりたいのか」

が短いページ数で理解できます。

ここで重要なのは、ゴンが最初から「ハンターになるぞ!」と動き出すだけではないことです。

その前に、

「なぜハンターなのか」

を描いている。

だから読者は、ゴンの旅立ちについていきやすい。

物語の最初で主人公の目的が明確だからです。

嵐の船で3人の性格を一気に見せる

ゴン・クラピカ・レオリオは「説明」ではなく行動で分かる

船に乗ったゴンは、クラピカとレオリオに出会います。

ここからの展開が非常に速い。

船は嵐に遭遇。

船員のほとんどが船酔いする中、平然としているゴンたち。

さらにゴンはウミヅルの声から、もっと大きな嵐が来ることを察知します。

この出来事だけで、ゴンが普通の少年ではないことが分かります。

そしてクラピカとレオリオ。

2人はハンターを目指す理由をなかなか話しません。

しかし、船長がハンター試験の試験官だと知るとそれぞれの目的を語ることになります。

クラピカは幻影旅団を捕まえるため。

レオリオは金のため。

ここで、

「品性は金で買えないよ。レオリオ」

というクラピカの言葉が出てきます。

この一言だけでも、クラピカがどういう人間なのかが分かります。

一方、レオリオは当然激怒。

2人は船の外で対立します。

しかし、その直後に船の破片で船員が海へ落ちる。

そしてゴンが迷わず海へ飛び込む。

すると、さっきまで喧嘩していた2人が助けに行く。

ここが非常に上手いところです。

キャラクターを「説明」していない

「クラピカは仲間思いな人物です」

「レオリオは正義感の強い人物です」

と説明されているわけではありません。

行動によって、それが分かる。

ゴンたちだけでなく、1巻には短い登場時間でも強烈な印象を残すキャラクターが多く登場します。

『HUNTER×HUNTER』1巻の人物分析|ゴン・キルア・トンパはなぜ印象に残るのか
『HUNTER×HUNTER』1巻そのもののストーリー構成や伏線、テンポについては、こちらの記事で詳しく分析しています。「『HUNTER×HUNTER』を読んでみたいけど、登場人物が多くて難しそう」そんな印象を持っている人もいるかもしれませ…

しかも、3人が協力することになるきっかけまで、ひとつの事件の中に収まっています。

だから読者は、

「この3人はこういう奴らなんだな」

と自然に理解できます。

『HUNTER×HUNTER』1巻のテンポが良い理由

ここが今回、一番面白いと思った部分です。

1巻では、かなり多くの出来事が起こります。

しかし、展開が唐突に感じません。

その理由は、出来事と出来事が「原因と結果」でつながっているからだと思います。

例えば、

ゴンがハンターを目指す

↓

船に乗る

↓

クラピカとレオリオに出会う

↓

船長による試験

↓

3人が認められる

↓

ハンター試験会場を目指す

↓

老婆のクイズ

↓

ナビゲーターとの遭遇

↓

ハンター試験会場へ

↓

一次試験開始

↓

サトツについて走る

という流れです。

一つ一つの出来事が独立していません。

前の出来事が、次の出来事を発生させている。

だからテンポが速くても、読者が置いていかれない。

「テンポが良い」と「展開が速い」は違う

ここはかなり重要だと思います。

漫画で「テンポが良い」というと、「展開が早い」という意味で使われがちです。

しかし、『HUNTER×HUNTER』の1巻を読んでいると、それだけではないと感じます。

テンポが良いのは、

読者が次に何を理解すればいいのかが明確だから

ではないでしょうか。

例えば老婆の「ドキドキ2択クイズ」。

いきなり奇妙な老婆が登場し、

「母親と恋人のどちらを助ける?」

という問題を出します。

一見すると、ただの理不尽なクイズです。

しかし、クラピカがルールの矛盾に気づくことで、

「正解は①でも②でもなく、沈黙だった」

と分かる。

さらに、最初に通った受験者が「正解した」のではなく、「通りな」と言われただけだったことから、その先に罠があることまで分かります。

一つの場面の中で、

疑問 → 違和感 → 推理 → 回収

が完結しています。

これでテンポを良くしています。

「究極の選択」が単なる試験問題ではない理由

クラピカが正解を見抜く

老婆のクイズで出される、

「母親と恋人、どちらを助ける?」

という問題。

これは普通に考えれば、答えようがありません。

人によって大切なものは違うからです。

だからレオリオは怒ります。

しかし、クラピカは「沈黙」が正解だと気づきます。

この展開自体も面白いのですが、さらに重要なのがゴンです。

ゴンは試験が終わったあとも考え続けます。

「もし本当に大切な2人の内、一人しか助けられない場面に出会ったら、どうする?」

ここで、このクイズの意味が変わります。

これは単なる知恵比べではなかった。

「正解のない選択を迫られたとき、人間はどうするのか」

という問いだったのです。

しかも、ゴンは問題を解けなかったことを気にしているわけではありません。

本当にそんな状況になったらどうするのかを考えている。

ここにゴンのキャラクターが表れています。

凶狸狐のエピソードで「観察する力」を描く

ゴンの特殊能力は「強さ」だけではない

ナビゲーターを探すために訪れた家で、ゴンたちは凶狸狐と遭遇します。

ここでも3人の特徴が、それぞれ違う形で描かれます。

クラピカは知識。

レオリオは医療知識と行動力。

そしてゴンは、圧倒的な身体能力と観察力。

特に面白いのが、凶狸狐を見分ける場面です。

人間から見れば同じように見える凶狸狐を、ゴンは、

  • 顔の違い
  • 声の違い

から見分けます。

本人たちですら「何年ぶりだ」と驚くほどです。

ここでも、ゴンの能力がただの「怪力」ではないことが分かります。

1巻の伏線は「後から驚かせる」ためだけではない

ここでいう「伏線」は、後の巻につながる謎だけを指しているわけではありません。

1巻で特に巧いのは、

キャラクターの特徴を先に小さく見せておくこと。

例えばゴンの釣り竿。

最初は単純に、

「ゴンは釣りが得意なんだな」

程度に見えます。

ところが一次試験でレオリオがカバンを落としたとき、その釣り竿が活躍します。

ゴンが釣り竿を使ってカバンを拾う。

ここで初めて、

「あ、この釣り竿にはちゃんと意味があったんだ」

と分かります。

こういう小さな積み重ねがあるから、キャラクターの行動に説得力が出ます。

こうした小さな描写が後の展開につながっていく構成については、物語全体の作り方という視点からも分析しています。

『HUNTER×HUNTER』1巻の物語分析|なぜゴンの冒険は止まらないのか
「『HUNTER×HUNTER』は面白い」と言われると、なんとなく分かる。でも、なぜ面白いのかを説明するのは意外と難しい。特に1巻は、現在の『HUNTER×HUNTER』と比べると驚くほどシンプルです。ゴンが故郷を出て、ハンター試験を受ける…

ハンター試験は「キャラクターを紹介する装置」になっている

一次試験が始まると、さらに多くのキャラクターが登場します。

トンパ。

ハンゾー。

ニコル。

キルア。

そしてヒソカ。

これだけ新キャラクターが登場すると、普通なら読者は混乱します。

ところが1巻では、かなり分かりやすく整理されています。

トンパは「新人つぶし」という役割を持っている

トンパは単なる嫌な奴ではありません。

「新人つぶしのトンパ」という異名があり、実際に新人へ下剤入りジュースを飲ませようとする。

そして、その人物を紹介することで、

「ハンター試験には試験そのもの以外にも敵がいる」

ということが読者に伝わります。

試験官だけを警戒していればいいわけではない。

受験者同士でも潰し合いが起こる。

この時点で、ハンター試験の危険さが理解できます。

キルアとヒソカの登場で試験の空気が変わる

キルアはゴンとの対比として登場する

キルアはゴンと同じ12歳。

ところが、同年代とは思えないほどの落ち着きを見せます。

さらに下剤を何本も飲み、

「毒じゃ死なない」

と平然と言う。

この時点で、

「この少年、普通じゃない」

と分かります。

しかもキルアは、最初からハンターになりたいわけではありません。

「ものすごい難関だと言われているから面白そう」

という理由で受験しています。

目的を持って試験を受けるゴンとは対照的です。

この違いが、そのまま2人のキャラクターの魅力になっています。

ヒソカは「説明」よりも行動で怖さを見せる

一方、ヒソカ。

トンパから過去の話を聞かされますが、その説明だけで終わりません。

話をしている最中にも、他の受験者を攻撃している。

つまり、

「危険人物ですよ」と説明された直後に、本当に危険な行動をしている。

だから読者は説明を疑う必要がありません。

ヒソカがどんな人物なのかは、本人の行動によって理解できます。

この「説明→実演」の早さも、1巻のテンポを支えていると思います。

「それぞれの理由」でキャラクターが一段深くなる

1巻の中でも特に印象に残ったのが、レオリオとクラピカの会話です。

クラピカは仲間を殺した幻影旅団への復讐。

レオリオは金。

最初だけを見ると、クラピカの方が立派に見えます。

ところが、レオリオが語った理由を聞くと印象が変わります。

レオリオが医者を目指すのは、金がなかったことで友人を救えなかった経験があるから。

だからこそ、

「金があれば友達を死なせずに済んだ」

という価値観を持っている。

クラピカが「金なんて」と考えていたところに、レオリオの事情が提示される。

すると、さっきまでのクラピカの怒りが消える。

ここでもキャラクターの評価が一段階変化します。

最初に提示された情報だけで人物を判断させず、行動や会話によって印象を更新させていく。

これが1巻のキャラクター描写の巧さだと思います。

そして一次試験は「走るだけ」なのに面白い

一次試験の内容は非常にシンプルです。

試験官のサトツについていく。

それだけ。

ところが、80km走り、さらに階段を上り続ける。

その過程で受験者が次々と脱落していきます。

ここで面白いのは、試験内容そのものよりも、試験によってキャラクターが浮き彫りになっていくことです。

レオリオは限界まで追い込まれる。

クラピカはレオリオの事情を知る。

ゴンとキルアは余裕を見せる。

そしてトンパは他人の弱点を突く。

つまり、

「走る」という単純な試験が、そのまま人物紹介になっている。

だから単調になりません。

『HUNTER×HUNTER』1巻は「情報を詰め込んでいる」のに読みやすい

ここまで読んでみると、1巻にはかなり多くの情報があります。

ゴンの過去。

ジンの存在。

クラピカの一族。

幻影旅団。

レオリオの夢。

キルア。

ヒソカ。

ハンター試験。

魔獣。

ナビゲーター。

それでも読みにくく感じない。

その理由は、情報が一気に説明されるのではなく、

「キャラクターが行動する理由」として情報が出てくるからではないでしょうか。

クラピカの過去は、レオリオとの会話の中で出てくる。

レオリオの過去は、クラピカに理由を聞かれたことで出てくる。

ゴンの能力は、釣りや凶狸狐との戦いの中で見えてくる。

キルアの異常性は、下剤を飲むという行動で分かる。

ヒソカの危険性は、実際の行動で分かる。

情報が「説明」ではなく「出来事」に埋め込まれている。

だから読者は物語を読みながら、自然にキャラクターを理解していけます。

『HUNTER×HUNTER』1巻を読んで感じたこと

最近の『HUNTER×HUNTER』から考えると、1巻は驚くほどシンプルです。

複雑な念能力もありません。

大量の人物が同時に動くこともありません。

難解な心理戦が延々と続くわけでもありません。

それでも面白い。

むしろ、シンプルだからこそ「漫画を読む気持ちよさ」が分かりやすい1巻だと思いました。

主人公が旅立つ。

仲間と出会う。

試験を受ける。

敵と遭遇する。

そして次の場所へ進む。

この基本的な流れの中に、キャラクターの個性や伏線、謎が少しずつ配置されています。

そして、重要なのはそれらが無理やり置かれていないこと。

「このキャラクターがこういう行動をしたから、次にこうなった」

という因果関係がかなり自然です。

だからページをめくる手が止まりません。

1巻の面白さをさらに深掘りしたい方は、こちらの記事もどうぞ。

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まとめ|『HUNTER×HUNTER』1巻の面白さは「次の展開を自然に待たせる力」

『HUNTER×HUNTER』1巻を一言で表すなら、

「前の出来事が、自然に次の出来事を読みたくさせる漫画」

だと思います。

ゴンの旅立ちから始まり、クラピカとレオリオとの出会い。

船での試練。

老婆のクイズ。

凶狸狐との遭遇。

そしてハンター試験。

どのエピソードも、それ単体で面白いだけではありません。

その出来事によってキャラクターが分かり、次の展開へ進む理由が生まれています。

だからテンポが速くても置いていかれない。

伏線があっても「伏線を読まされている」という感じがしない。

そして何より、次に何が起こるのかを自然に知りたくなる。

30年近く続いている長期連載だからこそ、「今から読むのは大変そう」と感じる人もいるかもしれません。

ですが、少なくとも1巻を読み返した限りでは、最初から複雑な漫画というわけではありません。

「長い漫画だから読むのを迷っている」という人にこそ、一度1巻を読んでみてほしい。

そんな1巻でした。

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