『スキップとローファー』3巻レビュー|夏の空気と“優しい距離感”が心に残る一冊

漫画レビュー

スキップとローファー3巻は、読んでいてとにかく“夏”を感じる巻だった。

生徒会長選挙。 動物園。 お泊まり会。 石川県への帰省。 文化祭準備。

次々と場所が変わっていくのに、それぞれの空気や暑さ、匂いまで伝わってくる。

まるで自分も近くで一緒に過ごしているような感覚になる巻だった。

生徒会長選挙編|“そんなもん”と思ってしまうリアルさ

今回まず印象的だったのは、生徒会長選挙のエピソード。

高嶺先輩は本気で生徒会長を目指していた。 しかし、対立候補の風上先輩は打算的な理由も含めて立候補していた事が分かる。

この打算的な理由に対して自分は「まあ、そんなもんだよな」と感じた。

大人になるほど、 純粋な気持ちだけで動いている人ばかりではないと分かってしまう。

でも、この作品はそこで誰かを悪者にしない。

風上先輩も嫌な人物として描かれているわけではなく、 高嶺先輩も理想論だけの人物ではない。

だからこそ空気が優しい。

さらに、その後の兼近先輩の話がすごく良かった。

小学生の頃に作った映画を、「恥ずかしいけど、誰にも見せないより、笑ってくれる人がいる方がいい」 と見せる。

この考え方に胸を打たれた高嶺先輩が、自分に足りない“寛容”や“遊び”を見つめ直そうとする流れも良い。

そこで美津未ちゃんが、「すてきです。先輩らしくて」 と肯定するのが、『スキップとローファー』らしい優しさだった。

普通なら、 「そこまでしなくても」 と言ってしまいそうな場面。

でも否定しない。

その空気感にホロッときた。

動物園編|距離感の描き方がうますぎる

動物園の回は、とにかく“距離感”の描写が素晴らしかった。

美津未ちゃんと志摩くん。 そして、それを見つめるミカちゃんとナオちゃん。

奇妙な2組で物語が進んでいく構成が面白い。

特にナオちゃんが大人だった。

志摩くんが美津未ちゃんを弄んでいる不安を、 真っ向から否定するミカちゃん。

その反応から、「あ、この子、志摩くんのこと好きなんだ」 と察する流れがすごく自然。

言葉ではなく反応で理解する描写が本当に丁寧だった。

また、志摩くんの気遣いも印象的だった。

暑さで疲れている美津未ちゃんを見て、 「帰ろうか」 と提案できる。

しかも、美津未ちゃんが遠慮している事を察して、 「また来ればいいじゃん」 と言える。

この自然な優しさがすごく良い。

さらに、弟が一度来た事があるからお土産を渡すのをやめようとする場面。

「志摩くんからもらうから嬉しい」

この美津未ちゃんの言葉がめちゃくちゃ良かった。

物ではなく、“誰からもらうか”を大切にしている感じが、美津未ちゃんらしい。

夏休み編|少しずつ心を開いていく空気

お泊まり会の回では、 少しずつみんなの距離が縮まっていく。

ゆづちゃんが中高一貫校から高校受験した理由を話したり、 ミカちゃんが輪の中に入りきれなかったり。

この“少しずつ”の描き方が本当にうまい。

特に好きだったのは、 途中で帰ろうとするミカちゃんに、ナオちゃんが声をかける場面。

ナオちゃんが学生時代の自分を少し重ねているようにも見えて、 すごく温かかった。

帰省編|地元に帰った時の空気がリアルすぎる

帰省回は、かなり印象に残った。

石川県へ向かう移動だけで5ページ使う。

でも、その丁寧さがすごく良い。

道中では緊張していた美津未ちゃんの表情が、 飛行機を降りて地元の景色を見た瞬間にふっと緩む。

あの感じ、帰省した事がある人なら絶対分かると思う。

さらに、実家に帰ると料理が豪華になる感じまでリアル。

大事件が起きるわけではない。

でも、 「帰省ってこういう空気だよな」 という感覚がとても丁寧に描かれていた。

ラストで東京とは違う、 地元の静かな空気を噛みしめる終わり方もすごく良かった。

全体の感想|“近くで夏を見ている感覚”になる巻

3巻はとにかく色んな場所へ行く。

でも、その全部にちゃんと空気がある。

暑さ。 湿気。 人との距離感。 夏休み特有の時間の流れ。

それらが全部丁寧に描かれていて、 読んでいると自分も近くで夏を過ごしているような気持ちになる。

大きな事件が起きる巻ではない。

だけど、 人との距離感や空気の優しさを、 ここまで丁寧に描ける作品は本当にすごいと思った。

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