6巻で変化していたガク
トリリオンゲーム6巻を読んでいて印象的だったのは、ガクの変化だった。
これまでのガクは優秀な技術者であり、ハルの相棒だった。
だが、前に出るのはいつもハル。
無茶なことを言うのもハル。
ガクはその夢を実現するために支える側の人間だった。
しかし6巻では少し違う。
ガク自身がハルの世界に近づいているように見えた。
それを象徴しているのが皇興業の会長とのやり取りだと思う。
ガクもハッタリを使うようになった
皇興業の会長から突然ゴルフの弾道計算について話を振られたガク。
当然、その場で正確な答えが出せる話ではない。
それでもガクは話を止めない。
その場でさも計算したかの様に見せかけてふさわしい答えを返し、会話を成立させる。
以前のガクなら難しかったかもしれない。
ガクは真面目な人間だ。
分からないことを知ったかぶりするタイプではない。
だからこそ、この場面には成長を感じた。
もっとも、皇社長もガクの答えを本気で信じていたわけではないだろう。
むしろ「ハッタリだな」と気付いていたようにも見える。
それでもガクの腕を信じて話に乗った。
なぜなら重要なのは正解を答えることではなく、その場で勝負できるかどうかだったからだ。
ガクはその勝負から逃げなかった。
ハルとガクの決定的な違い
ただし、ガクはハルにはなれない。
そしてなる必要もない。
ハルならハッタリを言って終わりだ。
後のことは後で考える。
だがガクは違う。
皇社長とのやり取りの後、ガクは弾道計算ソフトを作らないといけないと口にする。
ここがガクらしい。
その場を乗り切るための言葉では終わらせない。
言ってしまった以上、本当に形にしようと考える。
ハッタリを現実に変えようとする。
それがガクという人間なのだと思う。
ガクはハルの夢に賭けることを決めた
6巻の大きなテーマは買収話である。
ドラゴンバンクからトリリオンゲーム社買収に提示された金額は350億円。
人生を変えるには十分すぎる金額だ。
普通なら受けてもおかしくない。
むしろ受ける方が合理的ですらある。
しかし最終的にトリリオンゲーム社はその道を選ばない。
世界一を目指す。
ドラゴンバンクを超える。
そんな途方もない夢を追い続ける。
夢を語るのはいつもハルだ。
だが、その夢に人生を賭けるかどうかは別の話である。
ガクはその選択を迫られた。
そして6巻で、自分の意思でその夢に賭けることを決めた。
ALL INとは生き様のこと
6巻では「ALL IN」という言葉が何度も登場する。
トリリオンTVへの巨額投資。
ソシャゲ事業の利益を全投入する経営判断。
しかし、この言葉はお金だけを意味しているわけではない。
登場人物たちの生き様そのものを表しているように見える。
ハルは昔から全賭けだった。
そして6巻ではガクもまた全賭けする。
ただし、そのやり方はハルとは違う。
ハルは未来を口にする。
ガクはその未来を実現する方法を考える。
ハルが夢を描き、ガクが現実に変える。
その関係は6巻でも変わらない。
むしろ、より強くなっているように感じた。
まとめ
トリリオンゲーム6巻で描かれていたのは、ガクがハルになる物語ではなかった。
ガクは相変わらずガクのままだ。
慎重で、真面目で、現実的。
だが以前と違うのは、その現実を理由に夢から降りなくなったことだ。
ハッタリだと分かっていても前に出る。
無謀だと思っていても挑戦する。
そして口にしたことを本当に実現しようとする。
6巻のガクは、自分で夢を語る男になったわけではない。
ハルの夢を現実に変える覚悟を決めた男として描かれていたのである。


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