※本記事はスキップとローファー5巻の内容に具体的に触れています。未読の方はご注意ください。
5巻は、これまで「友達」という関係の中で保たれていた美津未と志摩くんの空気が、静かに、けれど確実に変わっていく巻でした。文化祭とテストが終わり、日常に戻ったかのように見えて、実はここから物語は新しい章に入っていきます。
美津未の恋心、その自覚のプロセスが丁寧
Scene24のラスト、志摩くんを見送った美津未が「好きだなぁ」とふと思ってしまう場面から始まる一連の流れは、この巻の白眉だと思います。1ページ、また1ページとカットを重ねながら、本人がじわじわとその感情に追いついていく構成になっていて、「そ、そうか。す、好きなのか・・・」という独白に辿り着くまでの間が絶妙でした。文化祭の後、新章突入の静かな導入で終わるのかと思わせておいて、最後の最後で本音を置いてくるあたり、まさにこの作品らしい引き際だと感じます。
続くScene25では、恋を「型にハメていいのか」という美津未自身の迷いが描かれます。ふみとの相談や少女漫画風の妄想シーンを経て、なおちゃんとの会話に着地するのが良い流れでした。爪や手のきれいさをめぐるやり取りから、「今はこれでじゅうぶんだなぁ」という美津未の結論に至るまで、恋愛を誰かの型に合わせなくていいというテーマが、説教くさくならずに伝わってきます。
誠とゆづ、静かに積み重なる関係性
Scene26〜27の誠とゆづのエピソードも、この巻の大きな見どころでした。誠が先輩に片想いをして奮闘する過程そのものよりも、その過程でゆづが見せる態度に読者の関心が向くよう作られているのが巧みだと思います。ゆづが自身の苦い恋愛の思い出を語りながら、誠のデートを応援する姿は微笑ましいのですが、先輩の何気ない一言「あのキレーなコかぁ」で誠の気持ちが急速にしぼんでいく展開は、恋愛の残酷な一面をさらりと描いていて印象的でした。
デートに失敗した誠をゆづが迎える場面、「今日めっちゃくちゃかわいいね!」という言葉と、乱れた髪を直してもらう誠の描写は、この2人の関係が友情の中に別の温度を持ち始めていることをはっきり感じさせます。誠が心の中で語る「地味でもこうやって会いに来てくれるあんたと友達になれただけで最高に幸せだよ」という思いは、恋愛関係にラベルをつけない今の距離感の心地良さを表していて、個人的にはこの巻で一番心に残った場面です。
クリスマスの一幕、志摩くんの不器用さ
Scene28のクリスマスプレゼントのエピソードも触れておきたいところです。志摩くんが美津未へのプレゼント選びで迷い、周囲の反応を気にして渡すのを躊躇う様子は、彼が「みんなに公平でいたい」という性格ゆえの不器用さを表しています。中学時代の同級生・迎井が「女子との距離感を上手くやってきた志摩くんが美津未にだけヘタクソなのはなぜ?」と一人で疑問を抱く場面は、読者にも同じ疑問を思わせる仕掛けになっていて上手いなと感じました。
ボウリング大会でのクラスメイトたちの微妙な牽制、美津未と志摩くんを自然に引き離す描写もリアルで、周囲の目という要素がこの2人の関係にどう影響していくのかを予感させます。
なおちゃんの過去、岩手の年末年始
最終盤のScene29、なおちゃんの過去にまつわる回想は、この巻の中でも少し違う温度を持つエピソードでした。花かんむりのシーンは牧歌的で優しく、そこから現在のなおちゃんと父親の電話のやり取りへ繋がる流れは、家族や故郷との距離感を丁寧にすくい上げていて、美津未の物語とは別の軸で読ませる力がありました。
まとめ
5巻は、これまで積み重ねてきた関係性のあちこちに、少しずつ変化の兆しが差し込まれた巻だったと思います。美津未の自覚、誠とゆづの微妙な距離、志摩くんの不器用さ、それぞれが次巻以降にどう転がっていくのか、楽観的にも不安げにも読める終わり方で、続きが気になる仕上がりでした。

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