トリリオンゲーム5巻物語分析|なぜ難しい話なのに面白いのか

物語構造分析

トリリオンゲームは説明漫画にならない

トリリオンゲーム5巻では、

証券担保ローン

株価操作

ソシャゲ課金

景品表示法

投資家への利益還元

など、ビジネスや経済に関する話が数多く登場する。

正直なところ、これだけを見ると難しそうな内容ばかりだ。

しかし実際に読んでみると、不思議なほどスラスラ読める。

むしろ続きが気になって仕方がない。

なぜだろうか。

その理由は、トリリオンゲームが説明そのものを面白さにしているのではなく、人間ドラマとして描いているからだと思う。

お金ではなく人を描いている

例えば証券担保ローンの話。

本来なら金融商品の説明だけで終わってもおかしくない。

しかし作中では株価が急落することで、蛇島が自分を切り捨てるよう提案する。

そしてガクたちは仲間だからできないと答える。

読者が気になるのは金融商品そのものではない。 

この状況で彼らがどんな選択をするのかだ。

難しい知識を説明するために物語があるのではない。

物語を面白くするために知識が使われている。

だから読みやすいのだと思う。

ソシャゲの裏側がリアルだから引き込まれる

5巻で特に印象的だったのが蛇島による課金システムの解説だった。

魅力的なキャラクター。

期間限定ガチャ。

おまけ付きガチャ。

ステップアップガチャ。

どれもソシャゲ経験者なら見覚えがあるものばかりだ。

面白いのは、この話が完全なフィクションではないことだ。

読者自身が体験したことのある世界だから納得感がある。

現実と地続きになっているからこそ、物語への没入感も増していく。

フリと回収が徹底されている

もう一つの面白さは構成の巧さだ。

33話ではゴッド・プロモーション株を担保にしていることが問題になる。

株価が下がれば全てを失う危険な状況だ。

そして最後に、その情報を流したのがハルだったことが明かされる。

また37話ではドラゴンバンクから人材を引き抜く話になるが、そこで以前ガクがドラゴンバンクへ侵入した出来事が活きてくる。

何気ないシーンが後になって意味を持つ。

だから読者は無意識のうちに次の展開を期待してしまう。

これは『アイシールド21』や『Dr.STONE』でも見られた、稲垣理一郎先生らしい物語作りだと思う。

成功だけで終わらせない

プチプチランドは売上50億円を突破する。

ドラゴンバンクの新作ゲームも追い抜く。

普通の作品ならここで大成功として終わるかもしれない。

しかしトリリオンゲームはそこで終わらない。

投資家へ利益が還元される様子を描き、一番リスクを負った人が最も大きな利益を得るという投資の仕組みまで描いていく。

さらにラストではガクが高校時代に好きだった同級生と再会する。

成功したはずなのに、どこか満たされない感情が残る。

だから物語に深みが生まれる。

タイトルのリレーが示すもの

この巻のラスト3話は、

「勝利の報酬」

「報酬の栄冠」

「栄冠の対価」

というタイトルになっている。

前の話の言葉を次の話へ繋げるリレーのような構成だ。

これは単なるタイトル遊びではないと思う。

勝利すれば報酬が得られる。

報酬によって栄冠を手にする。

しかし栄冠には対価が伴う。

この流れそのものが、ソシャゲ編で描かれたテーマを表しているように感じた。

難しい話を面白く変えるのがトリリオンゲームの強み

5巻にはビジネスや投資の知識が数多く登場する。

しかし読者が夢中になるのは知識そのものではない。

その知識によって動かされる人間たちの物語だ。

だから難しい話でも面白い。

だから続きが気になる。

5巻はソシャゲ編の成功を描く巻であると同時に、トリリオンゲームという作品の物語作りの巧さが詰まった一冊だった。

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