『トリリオンゲーム』4巻レビュー|“ハルVSガク”が始まる転換点

漫画レビュー

『トリリオンゲーム』4巻は、これまでの「ハルが暴れ、ガクが支える」構図から大きく変化した巻だった。

この巻で描かれるのは、敵との戦いではない。

“ハルとガクの戦い”である。

しかもそれは単純な仲違いではなく、「同じ夢を見ている2人が、違う方法論を持っている」という非常に面白い衝突になっている。

ハルの凄さが“恐怖”に変わる第24話

第24話「決戦武道館」では、ハルの“ハッタリと度胸”が強烈に描かれる。

これまで読者はハルを“痛快な主人公”として見ていたが、この巻では少し違う。

ハルは本当に目的のためなら何でも利用する。

ゲーム事業ですら、メディア帝国を築くための踏み台にしか見ていない。

その視点が見えた瞬間、ハルは頼もしい存在から“危うい存在”へ変化する。

そして、その違和感を最初に抱いたのがガクだった。

第25話で描かれる「起業した親友は壊れる」という恐怖

第25話「ゲームの絆」は、4巻の核とも言える回。

桐姫の

「仲の良い友人同士での起業は必ず壊れる」

という言葉が、ガクの中でずっと響いている。

今までガクは、ハルの圧倒的な行動力に引っ張られてきた。

しかしこの巻では初めて、

「自分はこのままでいいのか?」

と立ち止まる。

それでも最後にガクは、

「僕らは壊れない」

と信じる。

この回は、友情を描いているようでいて、実際には“依存関係からの自立”を描いている。

「ハルVSガク」がついに始まる

第26話「ハルVS.ガク」で、この漫画初の“味方同士の対決”が始まる。

ここが本当に熱い。

普通の漫画なら殴り合いになる場面だが、ガクはガクなりの戦い方を選ぶ。

それが、

「とんでもないゲームを作る」

ことだった。

つまり、ガクは初めて“ハルの土俵”に立とうとしたのである。

しかも、そのために選んだ方法がドラゴンバンクへのハッキング。

ここが面白い。

ガクは完全な善人ではない。

必要なら危険な橋も渡る。

しかし、第27話で彼は「ゲームデータを盗まない」。

むしろ古いシステムの脆弱性を修正する。

この違いが、ハルとガクの決定的な差になっている。

桐姫とのデート回が“勝負”になっている

第28〜29話は、一見するとデート回。

しかし実際には、

「ガクVS桐姫」

という情報戦になっている。

特に面白いのは、ガクの成長が細かく描かれている点。

以前のガクなら、服選びもハル頼りだった。

しかし今回は、自分が作った「ヨリヌキ」を使って服を選ぶ。

さらにホストからデートを学ぶなど、“自分の力で勝負しよう”としている。

そして観覧車でのやり取り。

桐姫は完全にガクがハッキング犯だと分かっている。

ガクもそれを理解している。

それでも、

「ごめん、なんの話かわからないな」

と返す。

これは単なる誤魔化しではない。

桐姫の失態を表に出さないための配慮であり、ガクの“人としての成長”が見えるシーンだった。

だからこそ、桐姫の表情が変わる。

この2人は敵同士なのに、互いを認め始めている。

第30〜31話で始まる“本当のゲーム作り”

後半では、ドラゴン娘の開発者・蛇島が登場する。

ここから一気にソシャゲ制作編へ突入するが、第31話のテンポはかなり速い。

しかし、それには意味がある。

4巻はあくまで「ハルVSガク」を描く巻だからだ。

ゲーム制作そのものよりも、

「ガクが自分の意志で進み始めた」

ことの方が重要だった。

だからこそ、

・継続率
・課金導線
・KPI
・爽快感

といったソシャゲ論を、一気に圧縮して見せている。

その中で描かれる、

「日本じゃモノ作ってる人間が報われない」

という言葉はかなり重い。

そして最後、蛇島のヘッドハントにハルが関わっていた事実が明かされる。

ハルは表舞台から消えていたわけではない。

裏でずっと“メディア帝国”を進めていたのである。

4巻は“ガク覚醒編”だった

4巻は、ハルの巻ではない。

完全にガクの巻である。

・ハルへの反発
・自分なりの戦い方
・桐姫との駆け引き
・ゲーム制作への覚悟

その全てを通して、ガクは“ハルの相棒”から“1人の経営者”へ変わり始める。

だからこそ、この巻のラストで再び姿を見せるハルが恐ろしく見える。

ガクが成長したからこそ、ハルの異常性も際立っていく。

4巻は、そのバランスが非常に巧みな巻だった。

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