格闘マンガを読んでいると、不思議な共通点がある。
魅力的に描かれている格闘技はだいたいプロレスだ。
たとえば 刃牙シリーズ。
主人公、範馬刃牙は作中でプロレスラーのマウント斗羽、猪狩完至の両人に勝利する。
でも刃牙は「全盛期のあなたなら勝てなかった」とそれぞれに言っている。
勝った側が負けた側を持ち上げる。
物語上の演出であると同時に作者からプロレスへの敬意だ。
それはプロレスは“全部受ける”競技だからだ。
ケンガンアシュラとタフネスの正体
今や刃牙と双璧をなす格闘マンガ、ケンガンアシュラでも同じ構造がある。
企業代表闘技者が命を削る世界で最後にモノを言うのはタフネス。
どれだけ技があっても、倒れたら終わり。
プロレス的な「受けて、耐えて、逆転する」構図は、読者の本能に刺さる。
華麗さよりも執念。
これはもう、プロレスの思想だ。
本作に登場する関林純はプロレスがベースにある人気キャラクター。
命を削る拳願仕合においてもあえて打撃を受ける事で観客を沸かせる。
実在する複数人のプロレスラーをモデルにしていると言われている。
2016年8月6日──石井智宏という証明
そんなを「受けて、耐えて、逆転する」を現実で体現した男がいる。
新日本プロレス所属の石井智宏選手。
2016年8月6日、G1 CLIMAX26。
会場は大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)。
相手は“レインメーカー” オカダ・カズチカ選手。
序盤から会場はオカダコール。
誰もがオカダの勝利を疑わなかった。
だが石井は倒れない。
何度も叩きつけられ、何度も膝を折り、それでも立つ。
打ち返す。投げ返す。
そのうち気づけば会場の空気が変わる。
オカダコールが、石井コールに変わる。
そして逆転勝利。
会場中の観客は大熱狂。立ち上がる者までいた。
あれは技の優劣ではない。
「ファンの声は届く」を体現した瞬間だった。
全部受けて、なお立つ者が空気を変える。
これこそ格闘マンガが描き続けてきた理想像だった。
プロレス最強とは思想である
プロレスが最強というのは、競技的な強さの比較ではない。
思想の強さだ。
逃げない。
受ける。
立ち上がる。
そして空気をひっくり返す。
格闘マンガの主人公が最後に辿り着く境地は、だいたいここだ。
格闘マンガを描く漫画家の先生たちはきっと、プロレスを信じている。
そして読者もまた、最後に立ち上がる背中を信じている。
だから言わせてほしい。
格闘マンガにおいてプロレスが最強なのだ。


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