※この記事は『スキップとローファー』4巻のネタバレを含みます。
4巻のテーマは「人との距離感」
4巻は文化祭が中心の巻ですが、描かれているのはお祭りそのものではありません。
登場人物たちが「人との距離感」とどう向き合うかが描かれています。
誰かと仲良くなること。
誰かを傷つけてしまうこと。
誰かとすれ違うこと。
人が集まれば、楽しいことだけではなく、苦しいことも増えていきます。
それでも一歩ずつ前に進もうとする姿が、この巻の大きな魅力でした。
美津未ちゃんは「立ち直る力」を持っている
4巻で改めて感じたのは、美津未ちゃんの強さです。
彼女は完璧な人間ではありません。
むしろ失敗もたくさんします。
頼まれていた動画を見ることができず、クラスメイトの愚痴を聞いてしまった時には、自分の至らなさに落ち込んでいました。
ですが、美津未ちゃんはそこで立ち止まりません。
落ち込んでも、ちゃんと前を向くことができます。
「多少ド派手に転ぶことが多い人間だけど、その分起き上がるのもムチャクチャ得意なんだから!」
この言葉は、美津未ちゃんという人物を最もよく表している気がします。
彼女の強さは失敗しないことではありません。
失敗しても立ち上がれることなんです。
志摩くんは過去の自分を美津未ちゃんに重ねている
一方で、志摩くんは少し違います。
彼は美津未ちゃんを見ているようで、どこか過去の自分も見ています。
子役時代の志摩くんは、家族のために頑張り続けていました。
傷ついても弱音を吐かず、周りを優先して生きてきた人物です。
だからこそ、美津未ちゃんが頑張りすぎている姿を見ると放っておけません。
「傷つかないでほしい。」
「そのままでいてほしい。」
そんな気持ちが伝わってきます。
ですが、文化祭を通して一つの変化が生まれます。
美津未ちゃんは自分とは違う人間なんだと気付いたことです。
何度転んでも立ち上がれる。
その強さを目の当たりにしたことで、志摩くんの見方も少しずつ変わっていきました。
山田は人を安心させる才能を持っている
4巻で改めて存在感を放っていたのが山田です。
慧理くんが迷子になった時、みんなが慌てて動き回る中、山田だけは自然に慧理くんの相手をしていました。
派手な行動ではありません。
でも、こういう人がいるだけで場の空気は和らぎます。
また、志摩くんと慧理くんを見て「兄弟って分かるわー。気ぃ遣い」と言った言葉も印象的でした。
山田は人を観察する力が高い人物です。
相手の本質を何気なく見抜いてしまう。
だからこそ、彼の一言が志摩くんの気付きにも繋がっていました。
普段はおちゃらけて見えますが、実はこの作品の重要人物なのかもしれません。
梨々華は前に進めずにいる人
4巻で一番苦しかった人物は梨々華かもしれません。
彼女は志摩くんのことを責めています。
ですが、本当は志摩くんだけが悪いわけではないことも分かっています。
それでも気持ちが追いついていません。
自分といる時の志摩くんは苦しそうなのに、美津未ちゃんといる時は楽しそう。
その現実を受け入れられないんです。
だからこそ、志摩くんを傷つけるような言動をしてしまう。
もちろん褒められた行動ではありません。
ですが、それだけ苦しみ続けている人物なんだとも感じました。
4巻は、梨々華の弱さがとても人間らしく描かれていたと思います。
諒子の存在がこの作品らしい
個人的に印象に残ったのは、文化祭の最後の諒子の描写です。
美津未ちゃんの陰で嫌なことを言っていた彼女が、自分の行動を悔やんでいました。
ここが『スキップとローファー』らしいところだと思います。
この作品には、完全な悪人がほとんど出てきません。
誰もが余裕を失い、失敗し、後悔します。
そして、その失敗を抱えながら少しずつ成長していきます。
だからこそ、登場人物たちを嫌いになれません。
まとめ
4巻は文化祭の巻でありながら、人との距離感を描いた巻でもありました。
美津未ちゃんは転んでも立ち上がれる人。
志摩くんは過去と向き合おうとしている人。
梨々華はまだ前に進めずにいる人。
山田は人を安心させる人。
そしてクラスメイトたちも、それぞれの悩みを抱えています。
『スキップとローファー』の魅力は、特別なヒーローがいないところなのかもしれません。
みんな少し不器用で、少し未熟です。
だからこそ、読者は自分自身を重ねてしまう。
4巻は、そんな登場人物たちの「人間らしさ」が特に詰まった一冊でした。


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