『トリリオンゲーム』4巻物語分析|なぜ4巻は“ハルを描かない”構成だったのか

物語構造分析

『トリリオンゲーム』4巻は、かなり特殊な構成をしている。

主人公であるハルが、ほとんど出てこないのだ。

実際、印象的に登場するのは冒頭数話とラスト程度。

にもかかわらず、4巻はシリーズ屈指の重要巻になっている。

なぜか。

それはこの巻が、

“ハル不在によってガクを成長させる巻”

だからである。

4巻は「敵との戦い」ではない

これまでの『トリリオンゲーム』は、

  • 芸能界
  • ソシャゲ業界
  • 大企業

など、“外部の敵”を攻略する物語だった。

しかし4巻で初めて描かれるのは、

「味方同士の衝突」である。

しかも面白いのは、ハルとガクが完全に仲違いするわけではない点。

2人ともトリリオンゲーム社を成功させたいと思っている。

でも、そのための“手段”が違う。

ガクは“面白いゲームを作る事”を重視している。

一方ハルは、ゲーム事業すら大きな計画の一部として動かしている。

つまり4巻は、

「同じ夢を見ている者同士の手段の違い」

を描いた巻なのである。

ハルを描かない事で“存在感”を強くしている

4巻のハルは、ほとんど表に出てこない。

だが逆に、それが異様な存在感を生んでいる。

ガクはずっとハルを意識している。

服を選ぶ時も。

ゲームを作る時も。

桐姫と会う時も。

常に頭の中にハルがいる。

つまり4巻のハルは、“登場人物”というより“重力”に近い。

画面にはいないのに、全員の行動原理になっている。

これはかなり上手い構成だと思う。

4巻は「ガクを主人公にする巻」

この巻では、徹底してガクが主体的に動く。

今までは、

「ハルが決める → ガクが支える」

構図だった。

しかし4巻では逆になる。

ガクが悩み、自分で決断し、自分の方法で勝負する。

特に重要なのが、ハッキングの描写。

ガクはハルのように“勝つためなら何でもやる側”へ近づこうとする。

だが完全には染まりきれない。

ゲームデータは盗まない。

脆弱性を修正する。

ここに、この漫画の面白さがある。

ガクは善人ではない。

でも、人としての倫理を捨てきれない。

つまり4巻は、

「ガクがハルになろうとして、ハルにはなれなかった巻」

とも言える。

桐姫とのデート回は“恋愛回”ではない

第28〜29話はデート回のように見える。

しかし構造としては完全に情報戦である。

ここで面白いのは、桐姫とガクの関係性。

以前までの桐姫は、ガクをパソコンに秀でた人材程度に見ていた。

だが4巻では違う。

観覧車での会話によって、桐姫はガクを“1人のプレイヤー”として認識する。

しかもガクは、桐姫の弱みを暴かない。

ここで初めて、

“ハルには無い強さ”

がガクに生まれる。

だからこのデート回は恋愛描写ではなく、

「ガクが対等な経営者として認識される回」なのである。

第31話のテンポが異常に速い理由

4巻終盤では、ソシャゲ制作が一気に進む。

普通なら数話かけてもおかしくない内容だ。

しかし『トリリオンゲーム』は、それを1話に圧縮する。

なぜか。それは4巻の本題が、

“ゲーム制作”ではないからだ。

この巻のテーマはあくまで、

「ガクがハルとどう向き合うか」である。

だからソシャゲ論や開発工程は、“ガクの成長を描くための材料”として高速で進む。

さらに物語としても、

「トリリオンゲーム社はまだ止まっていない」

事を読者に見せる必要があった。

その役割を担っているのが、ラストの蛇島ヘッドハントである。

4巻は“静かな転換点”だった

『トリリオンゲーム』4巻は、派手な成功回ではない。

むしろかなり静かな巻だ。

だが物語としては非常に重要。

なぜならこの巻で、

  • ガクが自立し
  • ハルとの手段の違いが見え始め
  • 桐姫との関係性が変化し
  • メディア帝国への布石が打たれる

からである。

つまり4巻は、

“これから先の巨大な物語が動き始める前の準備巻”なのだ。

そして、その中心にいるのはハルではなくガク。

だからこそ4巻は、“ガクが主人公になる巻”として強烈な印象を残している。

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