はじめに
少年漫画は努力を続けるジャンルだと思う。
才能があってもなくても、努力を重ねれば前に進む。
多くの物語はそうなっている。
でも、漫画を読んでいて妙に記憶に残るのは、
努力を続けた瞬間ではなく、
努力をやめた瞬間だったりする。
大切な存在を失った時。
自分の弱さを知った時。
そして、自分が特別ではないと分かった時。
その瞬間、物語は少しだけ現実に近づく。
読者もかつての自分と照らし合わせ、ある人は応援、またある人は怒りが生じる人もいると思う。
それぐらいこの瞬間は読者との距離が近づく瞬間なのだ。
今回は努力が止まった瞬間を描いた三つの漫画を紹介します。
ヒカルの碁
ハイキュー!!
ピンポン
どれも作中に努力が描かれています。
だからこそ、「やめた瞬間」がやけにリアルに見えるのでそこに注目してご覧ください。
※作中のネタバレを含みます。閲覧には充分にご注意ください。
ヒカルの碁
ヒカルの碁では努力をやめたというより、打つ理由を失った。
ヒカルの碁 でヒカルが碁をやめた理由は単純。
佐為がいなくなったから。
それまでのヒカルの碁は、
始めは佐為と一緒に打つものだった。
次第にヒカル自身にも碁を打ちたい、強くなりたいという気持ちが芽生えた。
でも、その中心にはいつも佐為がいた。
だから佐為が消えた瞬間、碁そのものが止まってしまった。
努力が嫌になったわけではない。
負けたわけでもない。
ただ、打つ理由が消えた。
この空白の時間があるからこそ、
ヒカルが自分の囲碁の中に佐為がいたと気づいてからはヒカルはさらに強くなった。
ハイキュー!!
ハイキュー!! は努力の漫画だ。
練習して、負けて、また練習する。
練習中や試合中、逃げ出したくなるシーンが何度もあるが、作中に出てくるキャラクター達は決して逃げない。
バレーボールは上を向くスポーツだから。
そんなこの作品で数少ない逃げたシーンがある。
烏野高校の2年生縁下力だ。
彼は1年生の時に厳しい練習に耐えられずにバレー部から離れた過去がある。
最終的に部活にまた戻りますが、一度離れてしまった自分を悔やみ、それが今の原動力となっている。
「努力している」ではなく、逃げた過去に追いつこうとしている。
この温度がハイキュー!!のリアリティだ。
ピンポン
天才が壊れた瞬間三つの中で一番衝撃的なのはこれかもしれない。
ピンポンのペコ。
彼は自分を天才だと思っていた。自信家。
その前提を壊したのが、アクマとの試合だ。
敗北。
ただ負けただけではない。
その試合で自分が特別ではない可能性を知ってしまう。
ただでさえ周囲との力の差を感じつつあったペコは卓球をやめる。
努力が嫌になったからではない。
負けたのが悔しかったからでもない。
自分の物語が壊れたからだ。
だからこの敗北は、ただの一敗なのに妙に重い。
そしてそんなペコをまた卓球へと戻したのもアクマだと言うことを忘れてはならない。
まとめ
努力が止まる瞬間
少年漫画は努力を肯定する。
でも、読者の記憶に残るのは
努力を続けた瞬間より、
努力が止まった瞬間だったりする。
佐為を失ったヒカル
逃げた過去を背負う縁下
敗北で卓球をやめたペコ
どれも、努力の否定ではない。
むしろその空白があるからこそ、その後の努力は本物に見える。
たぶん現実も同じだ。
人はずっと前には進めない。
一度止まる。
そして、その止まった時間が
物語を少しだけ現実に近づける。


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